通勤時間帯、ほぼ満員の電車の中で。
小学校4年生くらいだろうか、女の子を母親が抱っこして奥へ奥へと入ってきた。混んでいて可哀想にと思って抱っこしたのかしら、それにしても・・・と思いながら、水色のワンピースにフェラガモのパンプス姿の母親を眺めながら、場所を譲った。ふと目を下にやると、その女の子が水色のサンダルを履いたまま抱っこされていた。傍にいるOLと思わしき女性の迷惑そうな顔。その母子は、火星が地球に接近している話をしていた。何も気づかないらしい。
半径50cm・・・、社会的視点の欠けている人を称して私はこう呼んでいる。
「全く、もう」とため息の私。先の母子は、半径50cmどころか10cmだ。天体望遠鏡で火星を見なくてもいいから、肉眼で足元を見てもらいたいものだ。
息子が乳児だった頃、母親が仕事をすることについて、友人達と議論したことがある。よく「社会性を失う」と、母となった人を言うことがあり、私は大いに反論したものだ、「個人差だ」と。
母となり、我が子しか見えなくなる、或いは見たくなくなることで、社会性を失い、そのまま歳を重ね『オバサン』と呼ばれる女性達は確かに存在するのだ。
その女の子の将来を思うと、聊かやるせない気持ちになった。
*社会: 1.助け合って生活している人々の集まり 2.世の中、世間。 3.同じ仲間
社会的: 世の中に関係のある様子 ~三省堂 例解小学国語辞典より~